大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和32年(う)2456号 判決

被告人 木内繁雄

〔抄 録〕

右弁護人の控訴の趣意第一点について。

論旨は、原判決は法令の適用に誤りがあつて、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、破棄を免れない、というのである。よつて、原判決を査閲すると、原判決は罪となるべき事実中に被告人らが寺島功時名義の白紙委任状五通を順次作成偽造し、右偽造にかかる委任状のうち二通をその他の文書と共に一括行使した旨認定し、爾余の委任状三通については何ら行使の事実を認めていないこと、したがつて右委任状三通が現実には詐欺の手段として用いられなかつたことは、まことに所論のとおりである。されば、右委任状三通は本件詐欺の予備として作成偽造されたか、いまだ現実には行使されなかつたものであり、かつ前記偽造にかかる二通の委任状の行使といまだ行使されない右三通の委任状の偽造との間には牽連の関係があるものとは認め難いところであるから、原判決は、法令の適用に当つては、原判決摘示のごとく、「偽造公文書並びに偽造私文書の夫々一括行使の点は一個の行為にして数個の罪名に触れる場合で、公文書偽造と同行使、私文書偽造と同行使並びに右両者と詐欺との間には順次手段結果の関係があるから、刑法第五十四条第一項前段、後段、第十条により最も重い偽造公文書行使罪の刑に従う」ほか、前記偽造にかかる委任状のうち行使しなかつた三通の各私文書偽造とともに、それぞれ累犯加重をした上、以上は併合罪の関係にあるものとして刑法第四十五条前段を適用すべきであつたことは、所論のとおりであつて、この点に関する原判決の擬律は、結局前記偽造にかかる委任状のうち行使しなかつた三通についても、その余の二通とともに、その偽造の点はその行使若しくは詐欺との間に牽連関係にたつものとしているものであつて、失当といわなければならない。しかしながら、右の擬律を非難し併合罪をもつて論すべき数罪が成立すると主張するのは、すなわち、被告人の不利益に帰すべき論旨であつて、適法な控訴理由とはなし難いところであるから、結局弁護人の主張は採用し難い。ひつきよう、論旨は理由がない。

(坂井 山本長 荒川)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!